希少な白小豆の脱穀風景

羊蹄山麓では髙木農園さんのみが栽培している希少な白小豆の脱穀風景を見学してきました。

以前、このブログでも紹介しました、白小豆をこの羊蹄山麓で栽培されている髙木農園さんの智美さん。作るのがとても難しく、少ししか出回らないため、とても希少です。

この白小豆、6月頃に種を植え、収穫の時期がやってきました。夏にお邪魔したころには、青々と茂っていた葉ですが、秋になり、収穫の時期がやってきました。京極町のふきだし公園も、紅葉の見ごろを迎え、水面に映る色とりどりの葉が目を見張るほどきれいです。その奥に聳える羊蹄山の形の均等さは、やはり山麓の中でも1,2を争うと思います。(個人的に)

Threshing the white azuki beans

から竿を使って白小豆を脱穀する様子 撮影:Yuko Miyake

さて、白小豆ですが、刈り取った後に脱穀しやすいように「島立て」(ある一定の束のように交互に立てかけて置いておくこと)をして~2週間ほど、からからに乾燥させることによって、さやから豆を弾けやすくさせます。からからに乾かした後、コンバインで脱穀してみるも、やはり手作業で殻から出したほうが、傷つけず、取りこぼしも少ないそうです。そこで登場するのが、「から竿」という名の竹の棒のような農具。長い竹竿の先端に、回転する短い棒を取り付けたような形状をしていて、使うときはこの竿を持ち、むしろの上に広げられた穀物を短い棒を回転させながらたたくことにより、豆がはじき出されるという仕組みです。今では、ホームセンターはおろか、売っている所はないのではないでしょうか。

この「から竿」ですが、少しリサーチしてみました。漢字では「唐竿」と書き、その名のとおり、中国から伝来して日本中に広まったといわれています。北海道では竹が育たないので、本州から買っていたと聞きますが、どうなのでしょうか。

この、から竿、一度体験させてもらったのですが、リズムよく回さないと、先端の短い棒の集まりがうまく振り落とせずに、ぶらさがったままになっていまいます。慣れるのには少し時間がかかります。うまく振り落とせたときには、ちゃんと豆がはじき出されるのが見えます。豆が踊り出なくなったころに、今度はひっくり返してまたパシンパシンと叩きます。

Threshing the white azuki beans

取り出された白小豆 撮影:Yuko Miyake

こんな風に脱穀する風景を見ていると、昔からきっと、この収穫風景はさほど変わっていないのではないかと、羊蹄山に傾きかけた太陽に映るシルエットを見て思いました。

さて、そのあとの手順に登場する農具は「唐箕」(とうみ)という、ゴミと実を分ける農具です。そこで選別された豆は、そのあと網で選別し、そのあと手で選り分け(商品にならないものなどを取り除く)、だいたい大小の2種類に選別されます。この、全行程で、だいたい収穫した1/5くらいがゴミとなり、残った豆は、袋詰め、パッキングされます。育てるのももちろんのこと、脱穀、選別、と、すべて人の手によるものなので、そこに込められた想いや時間をより感じれるはずです。お話を伺いいていないと、何がどう希少で、どう手間なのかが、実際には分からない部分もありますが、こうして実際に体験させてもらい、お話を聞くと、その大変さがわかります。

余談ですが、この唐箕。唐竿と同じ「唐」という漢字が使われていたので、また少しリサーチしてみたところ、やはり中国から伝わったそうです。江戸時代から使われ始め、昭和30年ごろまで日本の主な農機具として広く利用されていたそうです。途中何度も改良が重ねられ、歯車が中に組み込まれたり、より軽い回転で風力を増加させるような工夫もされたものもあったそう。人の知恵が織り込まれている農具。まだこの時代にも使われているのには、そこには効率と、馴染み、そして理にかなった工夫が詰め込まれているからでしょう。

Threshing the white azuki beans

こちらが唐箕という農機。脱穀した豆を入れ、手で柄を回して風を起こし、粗ごみを風力で取り除くもの。 撮影:Yuko Miyake

これほど手間と愛情を注いでできた白小豆ですが、とてもデリケートなため、ちょっとした気候の変化や温度差で粒に影響が出てしまいます。

「正直なところ、この規模で原材料として売るのは難しい。」-生産者である智美さんは言います。

白小豆を使ったお菓子などの加工品としてのほうが消費者には手が届きやすいからです。原材料を使用するお菓子屋さんや料亭などは使用するならまとまった量を仕入れます。ほぼ一人でこの約3畝の畑を担っている智美さんにとって、収穫される白小豆は約2俵半~3俵。大事に育てたものだから、たくさんの人にその味を知ってほしい。そう願い、小分けにして美しくラッピングしますが、一般の人にとってなかなか高級な白小豆を購入するにはハードルが高すぎます。しかし値段を下げてしまっては、ここにかける手間を考えれば割に合わない。その狭間で悩んでいるのだそう。

ぜひ、地元のお菓子屋さんとコラボレーションしていただき、地元のものを地元で(地産地消)まずは地元の人々にその存在を知ってほしいなと思います。とっても楽しみです!

智美さんは、農業女子として、様々な活動をされています。フェイスブックのページからは、日々の農作業の風景などを頻繁に皆さんにシェアしてくれています。また、「しりべし女子会」という(略してしり女)という、後志エリアで頑張る女性たちが各々の町村の魅力を伝えることによって後志管内をもっと活発にするという団体にも所属し、京極町代表として発信されています。9月には北海道新聞にも記事として取り上げられています。

髙木農園

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