ナチュラルワイン新時代
最近よく耳にする「自然派ワイン」。この極力ブドウに手を加えない醸造法は 物事への感度の高い人たちの間で話題となっています。 ニセコ町のワインエキスパート、知久真大さんに語っていただきました。
皆さんは「自然派ワイン」と言う言葉を聞いたことがあるでしょうか。「 ヴァン・ ナチュール」、「 ナチュラルワイン」とも呼ばれ、近年パリやニューヨーク、東京を中心に盛り上がりを見せているワインです。 自然派ワインがどういうものなのかを簡単に説明すると、オーガニックで栽培されたブドウを、果実についている天然酵母だけで発酵させ、通常は使用する酸化防止剤(亜硫酸塩)を極力使用しない、または無添加で造られるワインのことを指します。古くからワインはこの製法で造られていました。
現在市場に出回っているワインの多くは、造り手が求める味わいにするために、培養酵母(※1)で発酵をさせ、地域や年により酸や糖分を添加して造られています。また、安定させる目的や流通中の事故を防ぐために濾過をして、酸化防止剤も一定量加えて出荷されているものです。そのおかげでどこでも気軽にワインが買えるのですが、亜硫酸の量が多く、たくさん飲むと頭痛を引き起こすワインや、産地や造り手の個性が失われているワインも数多く見受けられます。 染み入るような飲み心地の良さ、まるで出汁のような優しい旨み、搾りたてのブドウを飲んでいるかのようなフレッシュな味わいは、自然派ワインにしか無い特徴です。 また、多少飲み過ぎても次の日に残らないのも、このワインの良さだと言えます。
そして何よりの魅力は、こういったワインを造る生産者の多くは、畑での作業を最も重要視していて、化学的農薬に頼らない仕立ての工夫、完熟した病気のない果実を得るための徹底した選果や収量制限を行い、そのぶどうに極力手を加えないで醸造します。そのため、ぶどうの出来がワインの品質にストレートに表れるのです。
自然派ワインの方が優れているということではなく、それぞれにメリットやデメリットも生じます。なぜなら自然派ワインは亜硫酸を使わない事で揮発酸(※2)が高まり、お酢に近い味わいがするものや、酵母の働きがうまくいかず、堆肥のような香りが出てしまっているワインにも時々出会うからです。常に低温で管理されなければいけない上に、その年の気候にも左右されやすいので、同じ名前のワインなのに、年代が変ると別の味わいになっていることも良くあります。自然派ワインの製造工程のほとんどが手作業で、小規模な造り手が多いことから、通常のワインと比べると少し割高で、人気のある造り手のワインはなかなか手に入らないということも挙げられます。
この自然派ワインの盛り上がりは、日本有数のワイン産地でもある北海道内でも 始まっています。
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