北海道の山の特徴
国土面積の1/5を超える広大な北海道の山々は、国内各地や世界の山とは異なった特徴を持っています。サマーハイキングシリーズパート2へようこそ。
本州をメインで山登りをしている人にとって北海道の山は「ちょっと違う」と感じるところが多いと思います。いい時も悪い時もありますが確かにユニークな北海道の山。前回のパート1に続き、今回は、ニセコ周辺も含めた北海道ならではの山の特徴についてみていきたいと思います。
高緯度がもたらす特徴
通常本州などの山岳で、高山植物が見られたり、針葉樹林が見られる標高は2000mからとされていますが、北海道の山々は高緯度に位置する気象条件から、標高600m付近から稜線の展望が開け、1000m付近の山域でも高山植物の花畑が楽しめます。北海道の1000m峰でも本州の感覚では2000m級となり、これは本州の山と比べて、1000mほど加えた高度の気象条件にあるとされています。これが北海道に多くの雪を降らす所以でもあるのです。道北エリアでは、夏でも残雪が見られ、礼文島では低標高でも高山植物に出会うことができます。日本海側に面するニセコ連邦や羊蹄山でも同様に珍しい高山植物に出会え、札幌からのアクセスも比較的楽で素晴らしい眺望が楽しめると人気です。
火山活動がもたらす特徴
日本に限ったことではありませんが、山脈はもとを辿れば地球の地殻変動やプレートの大陸移動によって形成されたとされています。一方北海道の山は火山活動によって作られたものがほとんどで、その独特な山形がたのしめます。本州のように見渡す限り続く稜線を歩ける場所は少ないですが、時には美しく、時には不思議な魅力であふれています。それ故多くの場合は長時間のアプローチが少なく、特に冬季のバックカントリーには有利で、駐車場から直に登り始め、山頂付近に短時間で登頂(もちろん上りは急勾配ですが)し、板を履いたまま車まで戻ることが可能です。火山活動の影響も多い分、麓には良質の温泉が湧出しており、その豊富さも魅力の一つとなっています。
一面の笹という特徴
山に入る、と聞くと多くの人は背の高い木々や苔、木々の根元に茂るシダ植物など、アニメや映画で見る光景を想像されるかもしれません。意外にも北海道の山には、笹が多く群生し、特に豪雪地帯でもある羊蹄山の麓では、背の高いチシマザサが多くみられます。笹の茎の寿命は約8年ほど、1つの根から毎年芽を出します。その根の寿命は100年を超えると言われています。芽が斜めに生えて湾曲して伸びていく性質を持つチシマザサは、根曲竹とも呼ばれ、そのトンネルを歩くことで、山歩きの障害にこそなりますが、遭難するリスクも低いと言えます。毎年春先にはこの笹の「芽」がとても美味しい山菜として食卓に並びます。
まさに、最後の荒野
日本アルプス等本州の山を歩いていると、その景色はもちろん、きれいに整備された道や寝具や食事付きの山小屋が印象的とも言えます。その小屋や山荘に頼れば、ほぼ日帰りの装備で何日も山を歩き続けることもできます。北海道の小屋は無人の避難用がほとんどで、寝具や調理道具、食料もすべて持参する必要があり、決して快適とは言えないところが多いです。中には人気の登山道などでは木板などで整備されていることもありますが、大体はぬかるみや倒木、足元の植物の群生、進むたびに山ならではの虫との遭遇など、まさに大自然の中にいる感覚を思い知らされます。つまり手付かずの自然と対峙している感覚をしっかりと感じ取れます。それも逆を返せば目の前には人工物など一切なく、汗が染みる背中や泥だらけの登山靴、虫刺されなど、消して綺麗で便利ではない北海道の山を楽しんでいる、と恍惚感に浸れる要素でもあるのです。北海道の山はまさに、日本の最後の荒野といっても過言ではありません。
関連記事:まずは山に入る前の準備とは?続きはサマーハイキングシリーズ、パート1から。